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BtoBの95:5ルールは、すべての市場に当てはまらない。購買間隔2年・5年の計算例

この記事の結論。95:5は固定値ではありません。対象企業400社を仮定し、購買間隔が5年と2年の場合を比べながら、数字を提案や予算配分で使う際の注意点を解説します。

公開
2026年8月22日
著者
Web Director for SEO & Content
購買間隔を表す円環と、変わる比率を示す図

対象読者:マーケティングを初めて学ぶ人。高校生でも計算を追えるよう、仮の数字と計算の順番を分けて説明します。

購買する時期が違うと、同じ市場でも比率が変わることを示すイラスト

「BtoBでは、買い手の95%はいま購入を検討していない」。95:5ルールを、提案資料や予算配分の説明にそのまま使ってよいのか、迷うことがあります。

結論から言うと、95%はBtoB市場に共通する固定値ではありません。主要取引先を平均5年で見直す市場を前提にした、計算上の目安です。

この記事では、対象企業400社を仮に置き、購買間隔が5年の場合と2年の場合を比べます。数字の意味がどう変わるのかを見たうえで、提案で使える場面と使えない場面を整理します。

まず結論:95%は「5年間隔」の計算例

購買・更新を検討する時期が年間を通じて均等に分かれると仮定すると、同じ400社の市場でも、購買間隔によって四半期ごとの検討層は変わります。

想定する購買間隔 1年間に検討する企業 1四半期に検討する企業 その四半期に検討しない企業
5年 80社(20%) 20社(5%) 380社(95%)
2年 200社(50%) 50社(12.5%) 350社(87.5%)

95:5ルールは、この表の5年の行を短く表したものです。購買間隔が2年なら、同じ見方をしても「95:5」にはなりません。

計算例1:5年に一度、主要取引先を見直す市場

仮に、対象企業400社のそれぞれが平均5年で主要取引先を見直すとします。年間で検討する企業は、400社 ÷ 5年で80社です。

さらに、検討時期が四半期ごとに均等に分かれるなら、80社 ÷ 4で、その四半期に検討する企業は20社になります。残る380社が、その時点では検討のタイミングにない企業です。

この前提であれば、「目の前の20社だけでなく、今期は検討しない380社にも、将来思い出してもらえる状態をつくる必要がある」と説明できます。95:5ルールが伝えたいのは、この考え方です。

計算例2:2年ごとに見直す市場

同じ400社でも、平均2年で見直す市場なら、年間で検討する企業は400社 ÷ 2年で200社になります。四半期では50社が検討のタイミングにあり、検討のタイミングにない企業は350社です。

5年の場合と比べると、四半期に検討する企業は20社から50社へ増えます。短期の獲得施策を検討する対象は、5年の場合より多くなり得ます。

ただし、これは購買時期が均等に分かれるとした計算例です。たとえば契約更新が毎年3月に集中するサービスでは、年間の平均値を四半期で割っても、実際の検討時期を表せません。

95:5ルールは、誰が何を伝えるために示したものか

95:5ルールは、Ehrenberg-Bass Institute の John Dawes が2021年に示した考え方です。Dawes自身は、95%を厳密な法則ではなく、考え方を伝えるための「ヒューリスティック」と位置づけています。

つまり、95%を精密な測定値として扱うのではなく、「いま購入を検討していない企業にも、将来思い出してもらえる状態をつくる」という考え方を共有するための目安です。

提唱者の説明とEhrenberg-Bass Instituteの説明は一致しています。

自社に当てはめるなら、先に購買間隔を確かめる

95:5という比率を引用する前に、まず自社でいう「購買」が何を指すのかを決めます。そのうえで、過去の契約更新や再検討のタイミングから、購買間隔と時期の偏りを確認します。

確認すること 確認する理由
顧客が契約・更新を見直すまでの期間 5年という前提が自社に近いかを確かめるため
新規顧客と既存顧客で検討時期が違わないか 平均だけを見ると、実態を外すことがあるため
検討時期が特定の月や四半期に集中していないか 年間平均を四半期で割ってよいかを判断するため
自社でいう「購買」の単位 年間契約・案件・機器更新で、前提となる間隔が変わるため

この確認をせずに「95%の顧客は買わない」と書くと、元の前提を外した数字だけが残ります。

提案で使える場面・使えない場面

使える場面は、今期に検討する層だけに施策を寄せず、将来の検討層にも情報を届ける必要があると説明するときです。5年の計算例なら、今期に検討する20社だけを追うのではなく、残る380社に向けた認知や想起の活動も考える、という会話の入口になります。

使えない場面は、予算配分やKPIを「95対5」に固定することです。購買間隔や検討時期が違えば、数字も変わります。95:5は目標値ではなく、前提を確かめるための問いとして使うほうが安全です。

よくある質問

Q. 自社の購買間隔が分からない場合は、どうやって調べればいいですか?

A. 新しい調査を始める前に、すでに手元にあるものから出します。3つの順で見ます。

  1. 既存顧客の契約継続年数の中央値。 平均ではなく中央値を使います。1社だけ10年続いている顧客がいると、平均は実態から離れます。
  2. 失注してから再び商談になるまでの期間。 失注案件の記録が残っていれば、そこに購買間隔が現れます。「半年後にまた声がかかる」市場と「3年後」の市場では、打つ手が変わります。
  3. 更新・検討の月別分布。 件数を月ごとに並べるだけです。ここが平らでなければ、年間平均を四半期で割る計算は使えません(下の質問を参照)。

記録が残っていないときは、営業担当3人に「前回いつ検討して、その前はいつでしたか」を顧客5社ぶん聞くだけでも、桁は分かります。桁が分かれば「5年前提の95%が自社に近いか」は判断できます。 精度はその後の話です。

Q. 購買間隔が2年なら、「87.5:12.5」と書けばいいですか?

A. 計算としてはそうなりますが、その数字を単独で書くのは、95:5を単独で書くのと同じ間違いです。

この記事の計算は「検討時期が年間で均等に分かれる」という仮定の上に成り立っています。この仮定が崩れると、比率そのものが意味を失います。 たとえば契約更新が毎年3月に集中するサービスなら、1〜3月期の検討層は年間の4分の1どころではありません。年間平均を四半期で割る操作が、そもそも成立していないからです。

書くなら比率ではなく、前提と計算をセットで書きます。「購買間隔2年・検討時期が年間で均等と仮定した場合、四半期の検討層は12.5%」。長くなりますが、後から前提を聞かれて答えられます。

Q. 95:5を提案資料に載せてはいけないということですか?

A. 載せて構いません。載せ方だけが問題です。

  • 避けたい:「BtoBでは95%の企業がいま買わない」
  • 書ける:「購買間隔を5年と仮定した場合、四半期で検討する企業は5%という考え方があります(Ehrenberg-Bass、2021年)。自社の購買間隔は現在確認中です」

違いは、前提・出所・自社の状態の3つが入っているかです。3つ入っていれば、相手が別の前提を持っていてもその場で議論できます。抜けていると、数字だけが資料に残って独り歩きします。

Q. 「今期検討しない95%」に対して、具体的に何をすればいいのですか?

A. 提唱者のDawes自身が、同じページで5点を挙げています。

  1. 市場に入ったときに認識されるよう、ブランド認知を事前に構築する
  2. 心的可用性(mental availability)の構築が、広告の主要な役割である
  3. 一貫したメッセージで、長期にわたって認識を築く
  4. 検討を始めたときに使われる記憶のリンクを作る
  5. 購買準備が整った層だけを狙わない

4の「記憶のリンク」を具体化したものが、**カテゴリー・エントリー・ポイント(CEP)**です。Dawesは「カテゴリーが購買または使用される様々な状況」と説明しています。たとえば「基幹システムの保守が切れるとき」「担当者が退職して属人化が表面化したとき」のように、顧客が自社のカテゴリーを思い出す場面のことです。ブランドとCEPの結びつきが多いほど、心的可用性は高くなるとされています。

注目したいのは達成率です。 同ページには、確立されたブランドでも20〜30%、市場リーダーでも50%程度しかCEPと結びついていないという記述があります。裏を返せば、先行ブランドでも半分以上のCEPは空いているということになります。

ただし、この数字は元になった調査の対象・件数・期間が示されていません。「そういう記述がある」までで、自社の目標値には使えません。

そのうえで、実行の順序はこうなります。

  1. CEPを書き出す。 顧客が自社のカテゴリーを思い出す場面を、実際の商談の入り口から拾います。Dawesは調べ方として「購買頻度はどのくらいか」という単純な調査でも情報が得られるとしています。
  2. いま結びついているCEPを確認する。 既存顧客に「何がきっかけで探し始めましたか」と聞くだけでも、いくつのCEPを押さえているかが分かります。
  3. 空いているCEPを1つ選び、メッセージを固定する。 一貫性が条件なので、複数を同時に狙うと薄まります。
  4. 測る指標を先に決める。 指名検索の件数、直接流入、問い合わせ時の「以前から知っていた」の割合。この3つは、多くの場合すでに取れています。

Dawes自身が「心的可用性の構築には長時間を要する」と明記している点は外せません。四半期で効果を判定する設計にすると、成立しない打ち手です。

この5点と達成率は、Dawesがそう書いているという事実までで、実行すれば成果が出る根拠ではありません。効果を検証した調査には到達していません。

Q. 95:5と、ブランドと活性化の「60:40」は同じ話ですか?

A. 別の話ですが、同じ落とし穴を持っています。

95:5は「いま検討している層がどれだけ少ないか」という市場の状態を表す数字です。60:40は「予算をどう配分するか」という打ち手の数字です。前者は市場の観察、後者は配分の提案で、層が違います。

同じなのは、どちらも前提つきの推定なのに、固定の法則として引用されやすいことです。60:40のほうは、同じ報告書のなかに3つの異なる比率があり、著者自身が「厳密に従うべきではなく指針」と書いています(BtoBの「60:40」を鵜呑みにしない)。

まとめ:先に答えるべきは「95%か」ではなく「何年で見直す市場か」

95:5ルールは、すべてのBtoB市場に当てはまる法則ではありません。5年間隔なら95:5、2年間隔なら約87.5:12.5というように、比率は購買間隔によって変わります。

提案に使うなら、数字だけを置くのではなく、「何年の購買間隔を前提にした計算か」をセットで示します。そうすれば、数字を鵜呑みにせず、自社の市場に合わせて次の施策を考えられます。

出典一覧

# 出典 発行 確認状況
1 The 95:5 Rule(John Dawes 本人サイト) 2021年執筆と記載 本文確認
2 95% of B2B buyers are not in the market(Ehrenberg-Bass Institute) 約5年前(正確な日付不明) 本文確認

いずれも2026年8月17日に確認しています。


執筆者

Web Director for SEO & Content。数字をそのまま使わず、前提を確認して判断します。

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BtoBの「60:40」を鵜呑みにしない

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公開日
2026年8月22日
更新方針
出典元の公式情報が更新された場合に見直します。