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BtoBの「60:40」を鵜呑みにしない。同じ報告書に3つの比率がある

この記事の結論。BtoBのブランドと活性化の比率は、同じ報告書のなかに50:50・46:54・45:55の3つがあります。著者自身が、標本50件未満で暫定的な推定だと明記した原典を整理します。

公開
2026年8月22日
著者
Web Director for SEO & Content
異なる比率に分かれた三つのバランス図と、一つの報告書を示す図

対象読者:マーケティングを初めて学ぶ人。高校生でも読み進められるよう、比率は「誰の、いつの、何件の数字か」を先に説明します。

同じ数字でも、調べる範囲や期間が変わると見え方が変わるイラスト

「ブランド構築とセールス活性化は60:40で配分する」。予算配分の話で、この比率をよく見かけます。

BtoB版としてよく引用される比率について、報告書の原典(全38ページ)を読みました。同じ報告書のなかに、3つの異なる比率があります。

同じ報告書に、3つの比率が載っている

LinkedIn B2B Institute が公開している Binet & Field の報告書「The 5 Principles of Growth in B2B Marketing」には、B2Bの最適比について次の3つが出てきます。

箇所 数字
原則の見出し(p.13) 50 / 50
本文のデータ推定(Fig 6) 約 46% ブランド : 約 54% 活性化
巻末要約(p.34) 約 45% ブランド : 約 55% 活性化

3箇所すべてを原文で確認しました。

出典:The 5 Principles of Growth in B2B Marketing(Binet & Field、LinkedIn B2B Institute/分析対象は1998–2018)

どれか1つを「正解」として扱うことはできません。 引用するなら、報告書のどの箇所の数字かを明示する必要があります。

著者自身が限界を明示している

さらに重要なのは、報告書が自らの限界を書いていることです。

  • findings are tentative(暫定的である)
  • B2B事例は少なく、標本は50件未満
  • IPA Databank は効果の高いキャンペーンに偏る
  • 英国に偏る(3分の1弱は他国)
  • 予算が比較的大きい案件に偏る

比率については「厳密に従うべきではなく指針。小標本のため粗い推定しかできない」と明記されています。

標本50件未満で、しかも受賞応募という成功例に偏ったデータからの推定です。それを「BtoBの最適配分は◯:◯」と断定的に引用するのは、著者の意図から外れます。

そもそも60:40はB2Cの目安

前提として、60:40はB2C向けの数字です。Binet & Field 自身が、最適ミックスはカテゴリ・価格帯・ブランド規模などで変わると報告書の本文に書いています。

IPA Databank 全体は約40年分・約1,500キャンペーンを収録しています(この報告書の記載時点)。Binet & Field は2006年からB2Cの分析を続けており、B2Bを扱ったのはこの報告書が初めてです。

出典:The Key Works of Les Binet & Peter Field(IPA)

元になった「The Long and the Short of It」は、2013年11月にIPAが発行しています。分析対象の件数について「996件」という数字を挙げている記事がありますが、私は原典で確認できていません。ここでは「約1,000件」までにしておきます。

なお、2018年の後続報告で最適比率が62:38に更新された、という記述をIPAのブログで見かけましたが、これは外部寄稿のブログ記事で、私は2018年報告の原典を読んでいません。 「60:40は62:38に更新された」とは書けません。

使うなら、こう書く

この比率を提案の出発点にすること自体は問題ではありません。問題は、前提を省いて固定の答えのように使うことです。

避けたい書き方

B2Bでは50:50が最適とされています。

どの箇所の数字か分からず、但し書きも消えています。

書けること

Binet & Field のB2B報告書は、原則の見出しで50/50を挙げています。ただし同じ報告書の本文推定は46:54、巻末要約は45:55で、著者自身が「標本50件未満・暫定的」「厳密に従うべきではなく指針」と明記しています。出発点として使い、自社のデータで検証する前提で置いています。

説明は長くなりますが、後から「その数字は何を前提にしているのか」と聞かれたときに答えられます。

配分の議論で本当に効くのは、比率そのものより、いま自社がどちら側に寄っているかを説明できることです。60:40も50:50も、その議論を始めるための出発点であって、答えではありません。

よくある質問

Q. 結局、自社は何対何にすればいいですか?

A. 比率から決めないでください。先に、いまの配分を数字にします。 順序は3つです。

  1. 直近12か月の販促費を2つに分ける。 「今期の商談を作るための費用」と「それ以外」です。リスティング、展示会の当日商談、獲得直結の広告は前者。認知広告、オウンドメディア、PR、事例制作は後者になります。迷ったものは「止めたら今月の商談が減るか」で分けます。 減るなら活性化側です。
  2. 出た比率を、自社の現在地として置く。 ここで初めて「50:50から遠いか」が意味を持ちます。順序が逆だと、目盛りに自社を合わせることになります。
  3. 動かす方向は、比率ではなく症状で決める。 リードは取れているのに指名検索や直接流入が伸びないならブランド側の不足です。逆にリードは多いのに商談化率が低いなら、配分では直りません。訴求の中身か、リードの質の問題です。

報告書の比率は、3の判断を始めるための目盛りです。目盛りを先に信じて自社の数字を後回しにすると、順序が逆になります。

Q. 自社にまだ十分なデータがない場合は、どうすればいいですか?

A. 議論を止める必要はありません。ただし資料の書き方を変えます。

「決め」ではなく「仮置き」と書き分けてください。 「ブランド50:活性化50を初期配分とし、四半期ごとに見直す」と書けば、根拠がないことを隠さずに前に進めます。「最適配分は50:50」と書くと、後から動かしにくくなります。

判断に使う指標は、すでに取れているものだけで始めます。指名検索の件数、直接流入、商談化率の3つは、多くの場合すでに手元にあります。新しい計測を組んでから始めようとすると、たいてい始まりません。

Q. 上司や取引先に「60:40が定説だ」と言われたら、どう返せばいいですか?

A. 3段階に分けると、否定にならずに前提の確認へ移せます。

  1. 同意できる部分を先に置く。 長期のブランド投資が要るという主張自体は、報告書も否定していません。
  2. 数字の出どころだけを確認する。 「B2Cの60:40と、B2B版の数字は別ものです。B2B版は同じ報告書のなかに50:50・46:54・45:55の3つがあります」。ここは事実なので、意見の対立になりません。
  3. 決め方の提案に変える。 「比率を先に決めるより、いまの配分を出してから議論しませんか」。

譲ってよいのは比率の数字、譲らないほうがよいのは但し書きです。 50:50を出発点に置くこと自体は問題ありません。資料に「最適配分は50:50である」と書き切ってしまうことが問題です。半年後、その数字だけが独り歩きします。

Q. 標本50件未満なら、この報告書は読む価値がないということですか?

A. 逆です。資料を採るかどうかは、標本の大きさではなく限界が書いてあるかどうかで判断します。この報告書は3つともそろっています。

  • 限界を自分で書いている(標本50件未満・偏り・暫定であること)
  • 元データの範囲が分かる(IPA Databank、分析対象1998–2018)
  • 結論の強さを自分で下げている(「厳密に従うべきではなく指針」)

この3つがある資料は、数字が粗くても使えます。危ないのは、標本数も期間も書かずに「最適比率は◯:◯」とだけ書いてある資料のほうです。 粗さが見えない資料は、粗くないという意味ではありません。

Q. この記事は、いつ見直せばいいですか?

A. 次のどちらかが起きたときです。

  1. 「The Long and the Short of It」の原典PDFを入手できたとき。 分析件数を「996件」と書いている記事がありますが、原典で確認できていないため本文では「約1,000件」までにしています。原典が取れれば確定できます。
  2. 2018年報告「Effectiveness in Context」の原典を読めたとき。 「62:38に更新された」という記述をIPAのブログで見ましたが、外部寄稿の記事で、原典は未読です。確認できるまで、更新後の比率として引用しません。

逆に、新しい二次記事が出ただけでは見直しません。 同じ原典を引いた記事が増えても、確認できたことは増えないためです。

まとめ:数字を持ち出す前に、どの箇所の数字かを確かめる

  • B2B版として引用される比率は、同じ報告書のなかに3つある(50:50・46:54・45:55)。どれか1つを正解として扱えない
  • 著者自身が「標本50件未満」「暫定的」「厳密に従うべきではなく指針」と明記している
  • 60:40はもともとB2Cの目安で、最適ミックスはカテゴリ・価格帯・ブランド規模で変わると本文に書かれている
  • 引用するなら、報告書のどの箇所の数字かを添える。省くと但し書きごと消える
  • 配分の議論で効くのは比率そのものより、いま自社がどちら側に寄っているかを説明できること

出典一覧

# 出典 発行 確認状況
1 The 5 Principles of Growth in B2B Marketing(Binet & Field、LinkedIn B2B Institute) 発行年の記載なし(分析対象1998–2018) 全38ページを抽出し、3箇所の比率と但し書きを原文で確認
2 The Key Works of Les Binet & Peter Field(IPA) 掲載日不明 本文確認

いずれも2026年8月17日に確認しています。

この記事で確認できていないもの:「The Long and the Short of It」の原典PDF(分析対象件数)、2018年報告「Effectiveness in Context」の原典(62:38の記述)。どちらも二次情報でしか見ていないため、断定していません。


執筆者

Web Director for SEO & Content。数字の出典・対象・前提を分けて確認します。

次に読む

95:5ルールを誤用しないために

この記事の情報について

出典
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公開日
2026年8月22日
更新方針
出典元の公式情報が更新された場合に見直します。