対象読者:マーケティングを初めて学ぶ人。高校生でも読み進められるよう、専門用語は最初に出てきたところで言い換え、数字には前提を添えます。

SEOの相談では、最初に同じ数字が話題に上がりがちです。
「DAが20しかないので、このキーワードは無理ですよね」
この判断の仕方には問題があります。DAはGoogleの指標ではありません。 しかもそれは、私の意見ではなく、DAを作った会社自身が公式に書いていることです。
この記事では、一次情報を確認したうえで、DAの正しい位置づけと、代わりに何を見て難易度を判断するかを整理します。MozとGoogleの公開情報から確認できる事実と、それを案件の優先順位に落とすための私の実務上の判断フレームは、分けて扱います。後者はGoogleの公式スコアではなく、案件ごとの実データで検証する前提です。
1. DAを作ったMoz自身が「Googleのランキング要因ではない」と書いている
Domain Authority(DA)はMoz社が開発した独自スコアです。Mozの解説ページには、こう書かれています。
Domain Authority is not a Google ranking factor and has no effect on the SERPs. (Domain AuthorityはGoogleのランキング要因ではなく、検索結果に影響しない)
同じページで、Mozは次の点も明示しています。
- 1〜100のスコアで、Mozの Link Explorer が持つリンクデータを主軸に、機械学習で算出される
- 相対比較のための指標であり、絶対的なランキング要因ではない
- 検索エンジンやサイトの変化に応じてスコアは変動する
つまりDAは、「Googleがこのサイトをどう評価しているか」を表す数字ではありません。Mozが独自データから推定した、競合と比べるための目安です。
ここを誤解したまま「DAが低いから無理」と判断すると、本来は狙えるキーワードを候補から外すことになりかねません。
ただし、DAが無意味という話ではありません。 Moz自身は、同業内でのベンチマーク、被リンク施策の効果測定、競合とのギャップ把握といった用途を挙げています。用途の否定ではなく、位置づけの訂正です。
2. Googleが公開しているランキングシステムに「ドメイン権威スコア」はない
では、Google側は何を公開しているのか。Google Search Central のランキングシステム解説(2025年12月10日更新)には、17系統が挙げられています。
BERT、Link Analysis Systems & PageRank、RankBrain、Neural Matching、Passage Ranking System、Reliable Information Systems、Site Diversity System、Exact Match Domain System、Freshness Systems、Original Content Systems、Deduplication Systems、Reviews System、Spam Detection Systems、Crisis Information Systems、Local News Systems、MUM、Removal-Based Demotion Systems。
この中に、ドメイン単位の権威スコアに相当するものはありません。
一方で、同じドキュメントには重要な記述があります。
Site-wide signals and classifiers are also used and contribute to our understanding of pages. Having some good site-wide signals does not mean that all content from a site will always rank highly. (サイト全体のシグナルと分類器も使われ、ページの理解に寄与する。良好なサイト全体のシグナルがあるからといって、そのサイトの全コンテンツが常に上位表示されるわけではない)
つまり**「Googleはサイト全体を見ていない」というのも間違い**です。正確には、こうなります。
| 主張 | 正しいか |
|---|---|
| Googleはサイト全体のシグナルを使う | 正しい(公式ドキュメントに明記) |
| そのシグナルはDAである | 誤り(DAはMozの指標。Googleは自社スコア名を公開していない) |
| 良いサイトなら全ページが上位に出る | 誤り(公式が明確に否定) |
| PageRankはもう使われていない | 誤り(現行のランキングシステムとして掲載されている) |
最後の項目は補足が必要です。かつて公開されていたツールバーのPageRank表示が終了したことと、内部システムとしてのPageRankの存在は別の話です。公式ドキュメントには現在も掲載されています。
3. DA以外に見る6つの観点
DAを単独の判断材料から外すと、「では何で決めるのか」が問題になります。以下は、Googleの公式スコアではなく、案件の企画を整理するために私が使う6つの観点です。案件ごとのSearch Console、SERP、事業条件を確認して重みづけします。
判断観点 = DA・被リンク
+ 指名検索
+ ブランド想起
+ 既存順位資産
+ トピック実績
+ CV距離
| 変数 | 見るもの | なぜ必要か |
|---|---|---|
| DA・被リンク | 外部リンクの量と質 | 目安として使う。単独では判断しない |
| 指名検索 | Search Consoleで社名・サービス名を含むクエリの表示・クリックを見る | 既存認知の兆候を把握する。DAでは見えない |
| ブランド想起 | 問い合わせ・商談時の認知経路や比較候補 | 検索以前の認知の兆候。定量化できない場合は過信しない |
| 既存順位資産 | Search Consoleで確認できるクエリ・ページの表示/クリック/順位傾向 | 自サイトで起きている実績を確認する |
| トピック実績 | 対象テーマの既存ページ・クエリの実績 | サイト全体ではなくカテゴリ単位で違いを確認する |
| CV距離 | 検索意図から成約までの距離 | 順位が取れても事業貢献しないKWを避ける |
案件の優先順位を決めるとき、私はDAよりも、Search Consoleで確認できる実績と、そのキーワードが事業にどうつながるかを重く見ます。推定指標だけでなく、自サイトで実際に起きていることを確認するためです。
そして重要なのは、トピック実績はカテゴリごとに違うという点です。サイト全体の指標が低く見えても、特定テーマの既存ページやクエリに実績が見られる場合があります。ドメイン単位の1スコアだけでは、この差を十分に見分けられません。
4. サイトの状況別に、最初に検討する施策
以下は固定の正解ではなく、企画の出発点です。実際にはSERP、競合、コンテンツ制作体制、既存データを見て調整します。
| 状況 | まず検討するテーマ | 記事形式の候補 |
|---|---|---|
| 初期段階 | ロングテール、CV距離の短いもの | 比較、費用、事例、FAQ、地域掛け合わせ |
| 伸長段階 | 取れているロングテールをクラスター化し、ミドル帯へ段階的に広げる | ハブ記事+子記事 |
| 実績が蓄積した段階 | ミドル〜ヘッド、カテゴリ総論 | 調査記事、認知拡大型コンテンツ |
初期段階のサイトがヘッドKWに取り組むときも、まず関連テーマの実績をつくる順番にしたほうが、次の判断をしやすい場合があります。逆に既に評価されるテーマがある場合は、ロングテールだけに固定せず、対象を広げる余地があります。
企画段階では、たとえば次のように仮説を切り分けます。
- 現状のデータで単独攻略を検討する
- 先に関連記事が必要(クラスターを作ってから)
- 指名検索やコンテンツの蓄積を含めて再検討する
5. KPIもサイトの状況に合わせる
サイトの状況を無視して同じKPIを置くと、前進を正しく読み取りにくくなります。
| 状況 | 初期に見るKPIの例 |
|---|---|
| 初期段階 | CV寄与、商談化率、表示回数の増加 |
| 実績が蓄積した段階 | 非指名流入、Top10率、指名検索の増加 |
初期段階のサイトにTop10率だけを置くと、表示回数や問い合わせへの寄与といった早期の変化を見落とすことがあります。
6. 判断を運用に落とすために管理ツールを作った
ここからは、記事の結論をどう運用へ落とすかという私の実装例です。GoogleやMozの公式見解ではありません。上記の判断は、頭の中でやると案件が増えたときに崩れます。そこで、SEO案件を管理するローカルアプリを自作しました。
- SQLite+ブラウザUIのローカルアプリ。Python標準ライブラリのみで動き、外部パッケージ不要
- SEO案件オンボーディングウィザード:URL、自社データの取得方針、競合候補、分析出力、コンテンツマーケのヒアリングまで段階入力
- 管理対象:クライアント/ページ棚卸し/施策/トラフィック推移/レビュー/参照元/CSV取り込み(ラッコキーワード・Ubersuggest・GSC・Screaming Frog)
- 標準SEO施策の一括追加:title、meta description、見出し構造、内部リンク、アンカーテキスト、URL構造・パンくず、canonical/noindex/robots.txt/sitemap.xml/HTTPステータス、表示速度・Core Web Vitals、構造化データ、重複・薄いコンテンツ・カニバリ、CTA導線
- サイト強度の推奨方針を自動表示するが、確定は手動。担当者が「推奨どおり/保守的に寄せる/攻める」を選ぶ設計で、自動推奨が担当者の確認なしに確定することはない
- AI処理はAPI・ローカルLLM・処理キューを切り替えられる。クライアントデータを外に出したくない場合はローカルで完結できる
設計上の判断として、テクニカルSEOを独立領域にせず内部SEOの分類として扱っています。実務では両者を切り離すと施策の抜けが生まれるためです。
そしてDAは「難易度の目安」として持ちますが、確定判断には使いません。この記事の内容が、そのままツールの仕様になっています。
よくある質問
Q. では、DAはもう見なくていいということですか?
A. 見ますが、用途を3つに限ります。 Moz自身が挙げているのは、同業内でのベンチマーク、被リンク施策の効果測定、競合とのギャップ把握です。
この3つに共通するのは、同じ物差しで比べることだけに使っている点です。DAはMozのリンクデータから推定した相対値なので、「45だから狙える/20だから無理」のように絶対値で線を引く使い方が成立しません。同じ指標で競合と自社を並べる、施策の前後で自社を並べる、という比較の軸としてなら機能します。
逆に、DAを使ってはいけない場面は1つです。 キーワードをやる/やらないの最終判断に使うことです。そこは本文の6観点で決めます。
Q. クライアントや上司から「まずDAを上げよう」と言われたら、どう返せばいいですか?
A. 数字を否定せず、目的を確認するところから始めます。 「DAは意味がない」と返すと、相手の情報源ごと否定することになり、話が進みません。
- 同意する部分を先に置く。 DAが上がる状況は、たいてい被リンクや言及が増えている状況です。やろうとしていること自体は間違っていません。
- 一次情報を1行だけ示す。 「Moz自身が『Googleのランキング要因ではなく、検索結果に影響しない』と書いています」。これは意見ではなく引用なので、対立になりません。
- 目的に言い換える。 「DAを上げる」ではなく「被リンクと言及を増やす」なら、施策も測り方も具体化できます。DAはその結果として動く確認用の数字になります。
「DAを上げる」を目標に置くと、施策がリンク獲得だけに寄ります。 目的を言い換えるだけで、コンテンツ・PR・指名検索まで選択肢に入ります。
Q. Search Consoleのデータがまだ無い新規サイトでは、6つの観点をどう使うのですか?
A. 6つのうち4つは使えません。 指名検索・既存順位資産・トピック実績は、実績が貯まるまで空欄になります。ブランド想起も、問い合わせが無ければ材料がありません。
新規サイトで初日から判断できるのは2つだけです。
- CV距離:そのキーワードで来た人が、成約までどれだけ遠いか。これは検索意図から判断できるので、データが無くても決められます
- SERPの実物:実際に検索して、上位10件がどんなページかを見る。企業の公式ページばかりか、個人ブログが混ざっているか、広告が何枠出ているか
空欄になった4つは「弱い」ではなく「まだ分からない」です。 ここを混同すると、新規サイトはすべて「無理」になります。実績が無い状態では、CV距離が短いものから着手して、まず埋めるべき欄を埋めるのが順序です。
最初の1本を選ぶ基準は、「順位が取れそうか」ではなく**「取れたときに、次の判断材料が増えるか」**に置くと外しません。
Q. 「サイト全体のシグナルは使う」なら、結局ドメインの強さは効くのではないですか?
A. 効きます。ただし「効く」と「DAで測れる」は別の話です。
Googleの公式ドキュメントは、サイト全体のシグナルと分類器を使うと明記しています。そこは否定していません。 この記事が否定しているのは、そのシグナルの中身がDAだという推定のほうです。Googleは自社のサイト単位スコアの名前も算出方法も公開していません。
同じドキュメントには、良好なサイト全体のシグナルがあっても、そのサイトの全コンテンツが常に上位表示されるわけではないとも書かれています。つまりサイト全体の評価は、個別ページの結果を決め切るものではありません。
実務上の意味はこうです。「ドメインが弱いから全部無理」も「ドメインが強いから全部いける」も、どちらも公式が否定している読み方です。ページ単位・トピック単位で見る必要があります。
Q. 6つの観点は、どう重みづけすればいいですか?
A. 固定の重みは置きません。 これはGoogleの公式スコアではなく、案件を整理するための枠組みなので、案件ごとにSearch Console・SERP・事業条件を見て決めます。
そのうえで、実務で先に見る順番はあります。CV距離 → 既存順位資産 → トピック実績です。
- CV距離を最初に置くのは、ここで落ちるキーワードは順位が取れても事業が動かないためです。順位の可否より先に判定できます
- 既存順位資産とトピック実績を次に見るのは、自サイトで実際に起きていることだからです。推定ではありません
- DA・被リンクは最後です。ここまでで判断がつかなかったときの補助に使います
重みづけを固定したくなったら、それは判断を止めているサインです。 案件ごとに違うから観点を6つに分けています。
まとめ:単一の数字ではなく、自サイトの実績と事業貢献で決める
- DAはMozの指標。 Moz自身が「Googleのランキング要因ではなくSERPに影響しない」と明記している
- Googleの公開ランキングシステムにドメイン権威スコアはない。 ただしサイト全体のシグナルは使うと明言されている
- 単一指標で難易度を決めない。 6つの観点から確認し、案件ごとにSearch Consoleの実績と事業貢献を照合する
- サイトの状況に応じて、狙うテーマもKPIも変える
「DAが低いから無理」と言われた案件で、実際には取れるキーワードが残っていることは珍しくありません。判断の土台を変えると、打ち手が増えます。
出典一覧
- Moz「Domain Authority: What is it and how is it calculated」(2025年3月18日更新)
- Google Search Central「A guide to Google Search ranking systems」(2025年12月10日更新)
執筆者
Web Director for SEO & Content。検索・コンテンツの判断を、根拠と確認範囲に分けて整理します。